| Pelvis(骨盤)Pelvis こつばん [TA: A02.5.02.001] Feneis: 044 21 |
骨盤を形づくる骨は左右の寛骨とされらの間にある仙骨ならびに尾骨とである。寛骨は腸骨、坐骨および恥骨の3個の骨が合して1つの骨となったもので、胎生期から少年期までは軟骨によって結合されているが、16〜17才頃に骨化して完全にくっつく(骨結合)。これら3つの骨がY字型に合するところは股関節の関節窩に相当し、寛骨臼といわれ、臼のような形に凹んでいる。仙骨は5個の仙椎が癒合して1つの骨なったものであり、また尾骨も3〜6個の小さい尾椎がくっついて1つの骨になったものである。さて、左右の寛骨は前の方では線維軟骨によって結合(線維軟骨結合)されており、恥骨結合とよばれる。後ろの方では寛骨の茸状面と仙骨の同じ名の面とが仙骨関節によって結合される。
仙腸関節は関節という名がついているけれども、向かい合う関節面の形や大きさがほぼ同じで、そのうえ関節包は狭く、且つ4つの短いが、強い仙腸靱帯により結びつけれているので、ほとんど動かない(半関節)。
骨盤は大骨盤と小骨盤とに区分され、その界には分界線がある。分界線は岬角(第5腰椎と仙骨の結合するところで、前下にとびだしている)、腸骨の弓状線、恥骨櫛および恥骨結合の上縁を結ぶ線の事で、その囲む面は平面に近い。
大骨盤は広く、浅い鉢のような容器で、腹腔の下部に位し、腹部内臓を容れる。外側には腸骨翼があり、後ろには仙骨の上端があるが、そのほかに第4、5腰椎と腸骨稜との間に張る腸腰靱帯もまた後壁をなす。しかし前は開放されている。また上前腸骨棘と恥骨結節との間には鼡径靱帯があり、これと腸骨前縁との間を腸腰筋や血管が通る。小骨盤は短い円筒状で、骨盤腔の中に骨盤内臓を容れる。ふつう骨盤といえば小骨盤(狭義の骨盤)だけをさすが、大骨盤を含めた広義の骨盤は骨格の中でも性差の最もはっきりした部分で、産科学で重要視される。
小骨盤の前壁は恥骨、両側壁は坐骨と腸骨の一部でつくられる。前外側壁には閉鎖孔があり、閉鎖孔のところだけを残して閉鎖膜が張っており、筋のつき場所となる。後壁は仙骨と尾骨でつくられるが、大部分は骨のないところで、ほぼ縦に走る仙結節靱帯と、その前でこれと交叉するように横に張る仙棘靱帯の両者がここを補っている。大と小の坐骨切痕は仙結節靱帯によりそれぞれ大と小の坐骨孔にわけられる。そして大坐骨孔は梨状筋(仙骨前面から起こり、大転子につく)が骨盤の外へ出る通路をなし、またこの孔の中で梨状筋より上の部分を梨状筋上孔といい、上臀神経と同名の血管が通る。下の部分を梨状筋下孔といい、坐骨神経、下臀神経と同名の血管、陰部神経と同名の血管が通る。また小坐骨孔は内閉鎖筋(骨盤の内面)で、閉鎖膜とそのまわりから起こり、大転子につく)の腱が骨盤の外へ出る通路をなす。
小骨盤の入口は分界線によって囲まれ、小骨盤の出口は坐骨結節、恥骨下縁および尾骨の下端を結ぶ凸凹の線によって境される。なお骨盤の入口と出口の前後径の各中点を通る前に向かって凹な曲線を骨盤軸といい、分娩のとき胎児の頭が通る道(産道)の軸をなす。恥骨結合の下部は恥骨価格といわれ、男では角度が急であり、女では角度が鈍く弓状をなすので、恥骨弓と呼ばれる。骨盤の出口をふさぐ軟部組織として前上に尿生殖角隔膜と深会陰横筋がある。これらを男では尿道、女では尿道と膣が貫く。また後ろ下には肛門拳筋があり、内閉鎖筋の筋膜の一部(腱弓といわれ、特に丈夫になっている部分)から起こり、漏斗上に肛門に付く。骨盤は全身の骨格のなかで性差の最もはっきりした部分で、特に目立つのは小骨盤腔(狭義の骨盤腔)が女では男よりもひろく、たけが低いことであるこれは分娩ということを考えれば当然である。
Pelvisはギリシャ語のpelisに由来するラテン語で、ローマ時代には縁がややめくれた広口の深い容器を意味した。骨盤のことをpelvisというようになったのは16世紀の末である。
[臨床]骨盤の分類として骨盤上口はとくに女性において分娩の進行形と関係があるので、臨床的に重要である。女性骨盤は、形状によって、次の4基本型に分けられている(コールドウェル−モロイの分類Caldwell-Moloy classification)。しかし、実際には混合型もあって、明らかに分類出来ない場合も多い。@女性型骨盤gynecoid pelvisは女性骨盤の特徴をもつ代表的なもので、上口の形状は円いが、横径は前後径より若干大きい。恥骨下角は鈍角である。約40%。A男性型骨盤android pelvisは上口はハート形、骨盤腔は漏斗状で男性骨盤に似ている。15〜30%。B類人猿(縦長)型骨盤anthropoid pelvisは上口は前後径が横径より大きく、前後方向に長軸をもつ楕円ないし卵円形を呈する。骨盤腔は深い漏斗状、恥骨下角は小さく鋭角に近づく。20〜40%。C扁平型骨盤platypelloid (flat) pelvisは上口の横径はほぼ正常であるが、前後径は比較的小さい。約2%
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| Cavitas pelvis(骨盤腔)Pelvic cavity こつばんくう [TA: A02.5.02.002] |
骨盤腔は腹腔の続きで、骨盤内臓を入れるところとなるが、その底は骨盤底の筋板で閉鎖される。局所解剖学的には分界線より下方の腹腔は小骨盤腔として別に扱う。小骨盤腔内にある臓器を骨盤内臓と呼ぶ。
| Arcus pubicus(恥骨弓)Pubic arch ちこつきゅう [TA: A02.5.02.003] Feneis: 044 22 |
恥骨と坐骨の下縁は弓状をなすので恥骨弓と呼ばれる。
| Angulus subpubicus(恥骨下角)Subpubic angle ちこつかかく [TA: A02.5.02.004] Feneis: 044 23 |
左右の恥骨弓は恥骨結合のすぐ下で会合して恥骨下角を作っている。その角度の平均値は男性で約60°、女性で約80°で、一般に女性の方が大きい。
| Pelvis major(大骨盤)Greater pelvis だいこつばん [TA: A02.5.02.005] Feneis: 044 24 |
左右の分界線によって骨盤の内腔は上部の大骨盤と下部の小骨盤とに分けられる。大骨盤は生体では腹腔の下部に属して腹部の内臓を容れ、小骨盤は骨盤内臓を容れている。
| Pelvis minor(小骨盤)Lesser pelvis しょうこつばん [TA: A02.5.02.006] Feneis: 044 25 |
小骨盤は骨盤内臓を容れている。したがって小骨盤こそ本来の骨盤というべきで英語にはLesser pelvisとTrue pelvisの両方の名がある。また骨盤腔と呼ばれるのも小骨盤の腔のことである。
| Linea terminalis(骨盤の分界線、骨盤縁、腸骨恥骨線)Linea terminalis of pelvis こつばんのぶんかいせん、こつばんえん、ちょうこつちこつせん [TA: A02.5.02.007] Feneis: 044 26 |
腸骨恥骨線iliopectineal lineともよばれる。仙骨上縁の前端にある岬角から仙骨外側部を経て寛骨の弓状線に至り、更に恥骨櫛を経て恥骨結合上縁に達する稜線をたどることができる。これが分界線と呼ばれる。腸骨窩の下方の境界をなす。大骨盤から小骨盤を分ける。
| Apertura pelvis superior(骨盤上口)Pelvic inlet こつばんじょうこう [TA: A02.5.02.008] Feneis: 044 27 |
骨盤腔すなわち小骨盤の入口を骨盤上口というが、分界線がその縁をなしている。真上から見たときの骨盤上口の形は個体差に富むが、概して女性には楕円形が多く、男性にはハート形が多い。
| Apertura pelvis inferior(骨盤下口)Pelvic outlet こつばんかこう [TA: A02.5.02.009] Feneis: 044 28 |
骨盤腔の出口は骨盤下口であるが、この縁は凹凸の多い線をなしている。すなわち骨盤を下方からながめると、恥骨結合の下縁から恥骨下枝・坐骨枝の下縁を経て坐骨結節の内側縁に至り、次いで小坐骨切痕、坐骨棘、大坐骨切痕を経て仙骨外側縁に沿って尾骨の先端に達している。
| Axis pelvis(骨盤軸)Axis of pelvis こつばんじく [TA: A02.5.02.010] Feneis: 044 29 |
恥骨結節と仙骨前面の間のすべての正中結合線の中点をむすぶ線。骨盤軸は産道の走行に一致し、仙骨と尾骨の弯曲にほぼ平行する。
| Diameter transversa(骨盤の横径)Transverse diameter of pelvis こつばんのおうけい [TA: A02.5.02.011] Feneis: 044 31 |
横径は骨盤上口では左右の分界線間の最長距離、骨盤下口では坐骨結節間の最長距離をいう。
| Diameter obliqua(骨盤の斜径)Oblique diameter of pelvis こつばんのしゃけい [TA: A02.5.02.012] Feneis: 044 32 |
骨盤上口の斜径は一側の仙腸関節と分界線との光点と他側の腸恥隆起部の分界線間の直線距離。右仙腸関節と左腸恥隆起部の場合を第1斜径、左仙腸関節と右腸恥隆起部の場合を第2斜径という。
| Conjugata anatomica(解剖学的結合線、解剖学的真結合線)Anatomical conjugate かいぼうがくてきけつごうせん、かいぼうがくてきしんけつごうせん [TA: A02.5.02.013] |
解剖学的結合線は骨盤上口付近の縦径で、岬角中点と恥骨結合上縁中点間に引く径は真結合線より少し長く、平均11.8cm。これを真結合線(産科学的結合線)に対して解剖学的真結合線ともいう。
| Conjugata vera(真結合線、産科学的結合線)True conjugate しんけつごうせん、さんかがくてきけつごうせん [TA: A02.5.02.014] Feneis: 044 30 |
恥骨結合の後面(恥骨後隆起)と岬角を結んぶ最短距離で、骨盤腔の正中径のなかで最も狭い場所なので、産科学でとくに重要であることから産科学的結合線とも呼ばれる。胎児の頭部が産道を通れるか否かの判断の基準とされる。日本女性の真結合線の平均値は約11cmである。これが9cm以下になっている場合を狭骨盤といい、その程度によって分娩が困難または不可能(帝王切開が必要)になる。しかし真結合線は生体では計測できないので、産科の臨床では対角結合線(岬角と恥骨結合下縁を結ぶ正中径)を測り、これから2cmを減じて真結合線を算出する。更に簡単な便法としては、外結合線(恥骨結合上縁と第5腰椎棘突起先端を結ぶ正中径)8cmを引く方法、棘間径(左右の上前腸骨棘間の距離)から11cmを引く方法などもある。人類の大きな特徴は直立歩行と大脳の著しい発達である。直立二足歩行によって上肢が体重の負荷から開放されて種々の手仕事できるようにはなったが、全身の体重は下肢にかかることになり、いきおい骨盤も他動物よりも丈夫になり産道も狭くなった。ところが大脳の発達は必然的に胎児の頭を大きくし、狭い産道を大きな頭が無理にすり抜けないと出産できない羽目になった。これは人類が抱え込んだ大きな矛盾の一つである。他の哺乳動物では出産は決して難治ではない。
| Conjugata diagonalis(対角真結合線)Diagonal conjugate たいかくしんけつごうせん [TA: A02.5.02.015] |
岬角中点と恥骨結合下縁中点間の直線距離、経膣的に計測される。
| Conjugata recta(直結合線、骨盤下口の結合線)Straight conjugate ちょくけつごうせん、こつばんかこうのけつごうせん [TA: A02.5.02.016] |
骨盤下口にあって、尾骨尖と恥骨結合下縁との距離で、9.5〜10cm。この結合線はたいていは尾骨の屈曲性によって変化しうるから、骨盤峡部における正中結合線が縦経として大切な役割を演ずることになる。
| Conjugata mediana(正中結合線)Median conjugate せいちゅうけつごうせん [TA: A02.5.02.017] |
恥骨結合の下縁と仙骨の下縁との間を結ぶ線である(11.5cm)。
| Conjugata externa(外結合線)External conjugate がいけつごうせん [TA: A02.5.02.018] |
第5腰椎棘突起先端(腰椎点または腰点)と恥骨結合上縁の中点(恥骨結合点または恥骨点)間の直線距離。
| Distantia interspinosa(棘間径)Interspinous distance きょくとっきかんけい [TA: A02.5.02.019] |
左右の上前腸棘間径で最も前下方へ突出している点(前腸棘点または腸棘点)間の直線距離。
| Distantia intercristalis(腸骨稜間径)Intercristal distance ちょうこつりょうかんけい [TA: A02.5.02.020] |
腸骨稜間径(稜間径)は左右の腸骨稜で最も外側へ突出している点(腸骨稜点または腸稜点)間の直線距離。骨盤幅ともいう。
| Distantia intertrochanterica(大転子間径)Intertrochanteric distance だいてんしかんけい [TA: A02.5.02.021] |
左右の大転子の最も外側へ突出している点間の直線距離。左右の大腿部の最も外側へ突出している点間の直線距離を最大寛幅(臀幅)ともいう。
| Inclinatio pelvis(骨盤傾斜)Pelvic inclination こつばんけいしゃ [TA: A02.5.02.022] Feneis: 044 33 |
骨盤傾斜は解剖学的真結合線が水平面となす角度(約60°)すなわち腰椎点の高さと結合線の高さの差を一辺とし、外結合線を斜辺とする直角三角形を描いたとき、第三辺と斜辺がなす角度。

最終更新日:2002年09月13日