麻酔科医はSSI(Surgical site infection)を軽減できる?
SSIは全手術患者の約5%で認め、結腸・直腸手術ではその頻度は10〜20%にのぼる。周術期のSSIに影響を与える因子として、手術部位、基礎疾患、抗生剤使用、術中患者体温、循環血漿量、疼痛制御、組織酸素分圧などが挙げられる。特に好中球による酸化殺菌効果は、組織酸素分圧に依存し、通常30mmHg以下である創部酸素分圧を上昇させることにより創感染への抵抗が高まる。そこで、創感染の成立時期である術中から術直後に高濃度酸素を投与し組織酸素分圧を上昇させることで、SSI発生頻度が減少するとの仮説のもと無作為臨床試験が実施された1)。その結果、開腹結腸・直腸手術500例において、術中から術後2時間に30%酸素を投与した群と80%酸素を投与した群で比較検討し、術後2週間以内のSSI発生率が11.2%vs 5.2%(p=0.01)と、80%酸素投与群でSSI発生率を有意に抑えることを見出した。
一方、高濃度酸素に関しては吸収性無気肺や活性酸素などによる直接的肺毒性が報告され、安易な使用は避けるべきといわれている。2004年、Pryorらは外科手術患者165例を対象とし、術直後の吸入酸素濃度を35%または80%とした場合、SSI発生率は11.3%vs 25%(p=0.02)と80%酸素投与群で有意に高い2)という、Greifらの報告と異なる結果を報告した。2つの研究結果が異なる原因として、Pryorらの研究では2群間の基礎データに体重、手術時間などの相違があり、高濃度酸素投与群でよりリスクの高い状態だったことなどが原因のひとつとして考えられる。
SSIの原因や予防法の解釈は様々で議論の余地はあるものの、麻酔科医は中長期的な患者の予後にも影響を与える可能性がある。
- 1Greif R, et al. Supplemental perioperative oxygen to reduce the incidence of surgical wound infection. N Engl J Med 2000; 342:161-7.
- Pryor et al. Surgical site infection and the routine use of perioperative hyperoxia in a general surgical population: A randomized controlled trial. JAMA 2004; 291:79-87.
産科・小児麻酔グループ報告:第29弾
平成17年7月12日
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