慶應義塾大学病院での分娩について
近年の妊娠・出産の傾向について
近年、少子化の波が押し寄せ、日本は世界に類を見ない超高齢社会を迎えています。その中で、女性の一生で最大のイベントともいえる妊娠・出産に対して、その安全性や快適性に対して妊婦さんやそのご家族の意識が高まりつつあります。しかしながら、どこかで妊娠・出産は正常で当たり前という考え方があり、自分は大丈夫と楽観視するような風潮も根強く見受けられます。妊娠・出産は、言わば救急医療であり、正常に経過していたとしても、突如として母児の生命に関わる緊急事態が起こるというような可能性があるため、医療サイドのさらなる安全性の追求だけでなく、患者さんやそのご家族の意識の変化も進んでおります。
妊娠から分娩前後における母児の管理を周産期医療と呼びますが 、医療技術の進歩と共にここ 20 年で飛躍的に発展してきました。分娩に至らなければ児の詳細な予後や奇形が分からなかった時代では、母児の治療が必ずしも充分な結果に至らず,周産期死亡や妊産婦死亡となってしまうケースもありました。それはつまり、 7〜 8 割の正常に経過する妊産婦さんに合わせた医療でありました。しかし近年では、残りの 1 〜 2 割の胎児異常を含めた異常妊娠・分娩の管理が重要になり、いかにそういった方々に則した診断・治療ができるかといった概念のもとに、周産期医療のパラダイムが変化してきております。
慶應義塾大学病院の特徴
周産期医療を行っている病院といっても様々なレベルがあります。周産期センターとは、産科と NICU (新生児集中治療室)が併設され、産婦人科医と小児新生児科医が緊密に連携して母児双方を管理できる病院のことをいいます。この施設は、周産期医療において最も高度な医療を行える、言い換えれば、妊娠・出産において最も安全性が高いと言えます。当院は、地域母子周産期センターに認定されており、伝統的に正常妊娠だけでなく、母体や胎児のハイリスク妊娠の管理の向上にも邁進して参りました。また当院には、大学病院の特色である各専門分野のエキスパートによる母体に対する集学的治療が可能というメリットがあります。一方で、以下のようなオプションも選択可能となり、大学病院としてのハードの充実もさることながら、ソフト面に対しても十分に配慮して妊婦さんを支援する体制を敷いております。
(1)立ち会い分娩、和痛分娩
もともと日本では、伝統・慣習的に自然分娩が推奨され「母親になるための儀式」と認識されてきました。一方で、欧米において広く普及している「 birth plan」の考え方が日本においても浸透し始め、妊産婦さんからの要望が医療に反映されるようになりました。当院においても、分娩の一つのオプションとして夫立ち会い分娩や、和痛分娩を用意しております。
注:和痛分娩は、麻薬性鎮痛薬の静脈内投与による疼痛の緩和法であり、無痛分娩とは異なります。
(2)超音波検査
多くの妊婦を診察する中で母児が健康か否かを知るためには、必要かつ十分なスクリーニングが重要になります。早期の診断が、出生のタイミングや出生後の新生児治療など児の予後に大きく貢献すると考えられるからです。そのスクリーニング法の中でも、通常の妊婦健診以外に,安全性・簡便性から超音波検査が最も普及しております。当院では、最新鋭の超音波装置を設置し、診療に役立てております。一方で、スクリーニングをするためには、超音波検査に習熟し胎児の出す異常のサインを見逃さないようにしなければなりません。当院では、複数の日本超音波医学会専門医により確認された診断をもとに、母体・胎児の予後を想定しながら適切な周産期医療を施しています。
また、平成 17 年 11 月より 4D 超音波装置を導入しました。これは、通常の超音波装置と比べて診断能力が優れているというわけではありませんが、 3 次元構築された胎児のリアルタイム画像を妊婦さんに見ていただき、普段は見ることができない胎児をより身近に感じて精神的な繋がりを深めることができます。ただし、胎児の位置や姿勢、母体の観察条件によっては、施行できない場合もありますのでご了承ください
