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産科

人工授精について
(Artificial Insemination with Husband's semen : AIH

奥様の子宮内にご主人の精子を注入して妊娠をはかる方法です。法的に婚姻している御夫婦が、夫婦お二人とも希望すれば人工授精を受けることができます。


<AIHの実施方法>
 人工授精は奥様の排卵日に合わせて行います。超音波検査による卵胞径の計測などにより排卵日を推定し授精日を決定するため、奥様は授精を行う前に何回かの受診が必要です。また、ご主人の禁欲期間が短かすぎると精子の数が少なくなってしまう場合があるので、授精前3〜5日間は禁欲してください。授精の指定された当日の朝、ご主人が自分で精液を採取し、その後に精子を処理して奥様の子宮内に注入します。

<AIHの危険性>

  • 子どもへの危険性
    人工授精はこれまで50年以上にわたって施行されてきた技術であり、すでに何万人もの子どもがこの方法で生まれており、特定の異常との関連は報告されていません。理論的にも、子宮の中に入れられた精子は、自然の妊娠と同様に卵子に到達し、受精してから後の着床までの経過も自然の妊娠と変わりませんから、生まれてくる子供への影響はないと考えて良いでしょう。これは、一定期間体外で培養する体外受精との大きな違いです。

  • 奥様への危険性
    人工的に子宮内に注入するため、まれですが感染を生じることがあります。また処置により出血を伴うことがあります。  


非配偶者間人工授精について
(Artificial Insemination with Donor's semen:AID)

 奥様の子宮内に第三者から提供された精子を注入して妊娠をはかる方法です。
法的に婚姻している御夫婦で、下記の適応を満たしかつ夫婦お二人とも希望されればこの治療を受けることができます。


<AIDの適応>
原則としてご主人の精子が無い場合、つまり「無精子症」だけが適応になります。ただし例外として、これ以外の方法では妊娠が不可能と医学的に判断された場合も適応となることがあります。

<AID治療の実際>

  • 提供精子
    提供される精子は、妊娠する確率が高く、また感染や遺伝疾患の危険性のできるだけ少ないものを使用しています。さらに同じ提供者から生まれた子供の偶発的な近親婚の確率を少しでも低下させるために、一人の提供者が作る子供の数を制限しています。また夫婦のABOおよびRh血液型を検査して、生まれてくる子供の血液型からだけで、人工授精を施行したことが明らかにならない様に配慮しています。

  • 同意確認
    AID治療において、夫婦の同意確認はとても重要です。治療開始前に(婚姻関係、家族関係を明確にするため)戸籍謄本を持参して夫婦で来院してもらい、提供者の匿名性、秘密厳守、嫡出確認等を明記した合意書を作成します。その上で、授精のたびごとに書面による夫婦の同意が必要です
     
  • その他の検査
    その他に、子宮卵管造影(他院で行った場合はフイルム持参してください。)、子宮頸がん検査、感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)、内膜組織診、卵巣機能検査(血液検査)、クラミジア抗体検査が必要です。いずれの検査も他院で行った場合は結果を持参して頂き、当院での検査が不要かどうか検討することがあります。

    ご夫婦の血液型検査のみは他院の検査結果を持参していただいても、当院であらためて行うことにしています。初診時に夫婦で来院の際に、夫婦とも採血を行います。結果が出た後で上記の同意確認に移りますので、当日の外来の混雑具合によっては、相応の待ち時間をいただいております。帰りの飛行機、新幹線などのチケットを時刻指定でお求めいただくことはお薦めできません。
     
  • <AIDで産まれた子供の出自を知る権利と告知について>
    現在、日本では精子が匿名で提供されているため、本法で産まれた子供は遺伝上の父親を知ることができません。また逆に提供者も自分の子供を特定することはできません。さらにAIDの事実を子どもに知らせるかどうかについても、親の判断に任されています。
    しかし、1989年11月20日国連総会において批准された児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)第7条には「子はできる限りその父母を知り、かつ父母によって養育される権利を有する」とあり、最近になっていくつかの国では子どもの知る権利を認める方向にシステムを改変させています。我々がこれまでに行った子供の発育・発達・学業成績調査や出生後の父親の意識調査から、匿名による精子提供を前提とした我が国のAID治療は、それ以外の治療では親になれなかった多くの夫婦に健全な家庭をもたらし、健全な精神・身体能力をもつ子どもたちを育てる事が可能である事を示しています。また一方で、AIDの事実が明らかになったときに子供がうける痛手ははかり知れません。AIDで生まれてきた子供達が望まれてこの世にあらわれ両親に愛されて育ってきたことは事実ですが、問題が起こりうる治療である事も確かなのです。外来でよくご相談した上で手続きを行います。