定位放射線治療について

定位放射線治療(ラジオサージャリー)とは?

放射線を病変の形状に正確に一致させて集中照射する方法で、周辺正常組織を温存して病変のみを治療する新しい精密放射線治療の方法です。定位放射線治療は、脳などの病変を対象としてスエーデンの脳神経外科医レクセル(Leksell)によって始められ、"ラジオサージャリー"ともいわれています。用語については様々ないい方がなされますが、ここでは保険診療上の「定位放射線治療」または「定位照射」を用いることとします。

レクセルはラジオアイソトープであるコバルト60線源を用いたガンマナイフ(GammaKnife)を開発し、ラジオサージャリーの名前を世界的に広めました。その後、ライナックナイフとでもいうべき直線加速器(ライナック)で発生する高エネルギーX線を使用する方法が開発されました。慶應大学病院では1990年代初めより定位放射線治療の研究を始め、独自の装置を開発、他施設に先駆けて国内では早い時期に治療を開始しました。現在では新しく導入した装置も使用されています。
従来は1回で治療する方法が主体でしたが、最近では放射線生物学の理論を取り入れて同様の方法で何回かに分けて治療する分割定位放射線治療が広まりつつあります。

定位放射線治療の歴史

この治療は、最近になって広まりましたが、歴史は古いものです。
1940年代後半より、前述のレクセルは200-300kVの高圧X線を細く絞り用いていたが、1968年にはガンマナイフの原形を開発しました。その後、201個のコバルト線源を用いた商用のガンマナイフ装置が開発され、米国などで広まりました。これまでに脳動静脈奇形、聴神経腫瘍、髄膜腫などの良性疾患や一部の悪性腫瘍を中心に症例が多数蓄積されており、その有用性が示されています。
重粒子を用いたラジオサージャリーは1950年代後半に初められたが、大型サイクロトロンなどによって加速するために施行可能な施設は限られます。レクセルも試みたが、その後ガンマナイフに移行しています。
ガンマナイフは高額なためもあって最近まで全世界でわずかに数台が稼働するのみでした。1985年頃より、ハーバード大学などで、高エネルギーX線治療装置(ライナック)をつかったラジオサージャリーがさかんになっています。
特に最近では、工業用ロボットとライナックを組み合わせたサイバーナイフ、マイクロマルチリーフコリメータ装置などが話題になっています。

ガンマナイフとライナックによるラジオサージャリー(ライナックナイフ)の違いは?

ガンマナイフで使用するコバルト60のガンマ線とライナックの発生するX線は若干エネルギーが違うのみであり、物理的性質はほぼ同じです。大きく違うのは装置の形態や運用方法などです。
ライナックラジオサージャリーの円筒コリメータは製作が容易で種類を増やしやすい。大きいコリメータ(40mm径照射野程度)が使用できるため、ある程度の浸潤性悪性腫瘍の適応がある。また分割照射も可能です。
通常の放射線治療に用いる汎用ライナックを使用する方法は、専用装置により占有されない、ガンマナイフ装置と比較して線源交換の必要もない、などの利点があります。 しかし、汎用ライナック自体の設置に、十分な遮蔽を施した大きな部屋が必要になるなど、システム全体で考えるとかなり大がかりになり、設置は実際上、比較的大規模の病院に限られます。汎用ライナックによる方法は、精度と信頼性を維持するための精度管理を厳重に行うことが特に重要です。

ガンマナイフの利点は、定位放射線照射専用装置であるために、機械的な可動部分が少なく、高い精度を得るためにシステム的に位置設定や線量計算の方法、精度管理法が確立されていることがあります。また、専用装置であるために長時間を要する治療にも向いています。
装置自体は高価ですが、ライナックと比べてコンパクトであり、また装置自体で遮蔽効果があるので外部へのガンマ線の漏出が少なく、照射室の構造が簡単になります。そのため、小規模病院にも設置可能です。

どのような疾患に有効?

ラジオサージャリは転移性脳腫瘍や脳動静脈奇形で最も広く使用されおり、これにより疾患の治療戦略自体が大きく変化しています。その他、聴神経腫瘍,髄膜腫などの良性腫瘍、他の悪性脳腫瘍や、或は、頭部以外に肺、肝など腫瘍の一部にも適用が拡がっている。
基本的にはあまり大きな腫瘍には向かず、3,4cm程度以内の大きさの病変に優れた治療効果を発揮します。

マイクロマルチリーフ装置について

慶應大学病院では現在、アキ ュ・ナイフ(AccuKnife)というマイクロマルチリーフ装置を使用したライナックラジオサージャリーを中心に行っています。マイクロマルチリーフは現状ではもっとも理想的な照射方法の一つです。
3次元的に多数の方向からX線ビームを投影することにより、重要臓器を避けて立体的に病変形状に合わせた照射ができます。

分割定位放射線治療

聴神経腫瘍などの腫瘍性病変では何回かにわけておこなう分割定位放射線治療が有利な場合があります。

治療計画装置と精度管理

病巣に近接する重要臓器を避けて、病巣に高線量を投与する高精度の治療をおこなうためには、3次元治療計画コンピュータが必須となります。また、ラジオサージャリーでは位置的精度を保証する方法が特に重要であり、ラジオサージャリーに必要な精度を確保するためのQA(品質保証)法が必要になります。

その他の定位放射線治療施設

参考書: このページの一部は下記書籍を改変して記載してあります。

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