特定非営利活動法人

遺伝子診断臨床応用支援機構


 

遺伝子診断技術の医療現場への導入を進めるためのNPO、遺伝子診断臨床応用支援機構(理事長・高橋孝雄 慶応大学医学部小児科教授)が2006年10月24日に設立されました。

 

NPOは「研究成果は迅速に社会に還元されるべきである」という理念にもとづき、慶応大学の小児科専門医のグループを中心に企画・設立されました。同グループが有する先進的な遺伝子診断技術を全国の医療機関に供与し、遺伝子診断についての情報を患者様やご家族にわかりやすく発信することを目的としています。


 

先天性疾患の診断や治療方針を決定するときに、遺伝子診断が非常に役に立ちます。現在、研究室レベルでは多くの先天性疾患について、遺伝子診断が可能になっています。しかし、既存の遺伝子診断技術ではコストと人件費がかかりすぎるため、医療現場での実用化にはほど遠いのが実状です。また、遺伝子診断に対して健康保険が利用できる先天性疾患はほとんどなく、臨床検査会社が提供している遺伝子検査の種類もごく僅かです。

 

慶応大学医学部小児科は、せっかくの科学技術の進歩が患者様の診療に還元されていないという現状を改善しようと、「遺伝子診断の医療現場での実用化」というテーマに取り組み、熱変性高速液体クロマトグラフィーという新技術を利用して、これまでに30以上の先天性疾患の遺伝子診断システムを完成させました (特許申請済)。

 

研究室でえられた成果を、全国の小児科医師や患者様に提供するためには、技術的な側面ばかりでなく、社会的な側面からの問題解決が必要であることから、NPO法人「遺伝子診断臨床応用支援機構」が設立されました。これまでに開発した技術をもちいて、全国の小児専門医療機関に遺伝子診断サービスを提供し、先天性疾患の患者様やご家族に対して遺伝子診断についてのインフォーメーション・センターとなることを目指しています。

 

東京医科歯科大学・難治疾患研究所・分子細胞遺伝の稲澤譲治教授がアドバイザーとして理事に加わり、大手臨床検査会社である(株)ビー・エム・エル(株)ファルコバイオシステムズや遺伝子検査における個人情報保護の分野で新規事業を開拓している(株)NTTデータも慶応大学小児科の取り組みに賛同し、当NPOに参画しています。


設立趣旨書

1.(法人の目的) この法人は各種遺伝性疾患の効率的な遺伝子診断法を開発し、実施に必要な技術・情報を包括的に国内外に提供して、遺伝子診断の臨床応用を促進・支援し、公益の増進に寄与することを目的とする。

2.(設立の理由・意図) ヒトゲノム計画の進展にともない、数百の遺伝性疾患の原因遺伝子が明らかにされ、遺伝子診断が可能となった。時期を同じくして遺伝カウンセリングも急速に普及しており、遺伝子診断に対する社会的なニーズが増大している。遺伝子診断をおこなえば、確定診断が得られること、正確な遺伝カウンセリングが可能になることなど患者・家族にとって有益な情報が得られる。しかし現時点では効率的な遺伝子診断の体制が未整備であり、その臨床応用は進んでいない。このような状況の解決をはかるべく、設立代表者らは1998年から熱変性高速液体クロマトグラフィー法(以下DHPLC法)を利用した系統的遺伝子解析システムの開発に取り組んでいる。現在までに、比較的頻度の高い約20の遺伝性疾患の遺伝子診断法を標準化・規格化した。平成16年2月より「www.dhplc.jp」サイトによりインターネットで遺伝子診断に関する情報を公開し、年間約2000件のアクセスを受けた。さらに全国の臨床遺伝専門医からの要望に応じて年間約200件の遺伝子診断を支援してきたが、その数は年々増えており、単独研究室では対応しきれない状況である。今後は、他の研究機関・医療機関との連携を通じて遺伝子診断の臨床応用を進めていく必要がある。この法人は自らが有する包括的な遺伝子診断に関する技術・情報を国内外の臨床遺伝専門医と共有し、広く遺伝性疾患の患者や家族を益することを図るものであり、特定非営利活動法人として認証を受けることが必要であると考えられる。

3.(法人の活動)  遺伝性疾患を、DHPLC法により診断する方法を開発・整備する。DHPLC法による検査条件・診断方法をホームページに公開し、国内外の遺伝子検査施設と情報を共有する。

遺伝子診断の技術習得を希望する医師・技術者に対して、学習の場を提供する。遺伝子診断を求める遺伝性疾患の患者について、担当専門医からの要望に応じて遺伝子診断の実施を支援する。遺伝子診断の意義についての社会啓発を図る。

4.(事業の必要性) 多くの遺伝性疾患の原因遺伝子の解明やわが国における遺伝カウンセリングの急速な普及にともない、遺伝性疾患の遺伝子検査システムの確立は急務といえる。欧米に比べわが国では、診療のための遺伝子診断システムの確立が大きく立ち遅れており、個別の研究者がボランティア的に遺伝子診断を実施しているのが現状である。各疾患の患者数が少ないため、商用検査会社が近い将来にこの分野の事業を開始することも期待できない。以上のような現状から、各種遺伝性疾患の効率的な遺伝子診断法を開発し、実施に必要な技術・情報を包括的に国内外に提供して、遺伝子診断の臨床応用を促進・支援することは緊急を要するものである。


 

定款